―――違う。無力なのは、私のほうだった。さきを、夢のある、キラキラ輝いて精いっぱい生きていたあの子を、救えなかった。
誰にどうすることもできなかっただなんて、そうやって自分に言い聞かせて逃げてた。
さきが殺された日、私とさきは別々に帰宅した。いつも一緒に帰っていたのに、その日はたまたま、私が学校で用事があるといって一人で帰るといったからだ。正直のところ、何も用事はなかったし、さきも私を待つよ、と言ってくれた。
私が、さきと一緒にいたくなかったんだ。さきはクラスでも明るい人気者だった。対する私は陰でひっそりと毎日を過ごしているようなタイプだった。そんな私がさきみたいな子と仲良くするのを当然周りは不審がる。
周りは、さきは優しいから私みたいな子にも仲良くしてあげてるんだ、という解釈をとった。私はその解釈がどうしても気に食わなかった。私がこんなに根暗なのが元は、の理由なのだが、その時の私にはさきのことを恨めしく思うしかできなかったんだ。
「みさと!私ね、いつか、学校の先生になるの!!!」
「なんでまたいきなり・・・。」
「私ね、みさと。夢を与える仕事がしたいんだ。先生ってね、規則とか厳しくても、その中では自由だって教えられるの。その中で私たちは頑張ったら何にだってなれるよ、そのチャンスが私たちにはみんな平等にあるんだよ、って。だからね、私、教師になってみんなが自由に羽ばたける手伝いするよ!!!」
・・・あぁ、いつの会話だったっけ。でもはっきり覚えている。こんな、きれいな夕焼けが見える日だった。その夕日に照らされるさきは、言いようがなく、輝いていた。夕日のせいじゃない、自らの力で、輝いていた。
人に夢を見せるという自分の夢を喜々として語っていたさき。
その笑顔を、その夢を、私は私のわがままで奪ったんだ。あの日つまらないことを思わないで一緒に帰っていれば。さきは死なずに済んだんだ。さきが死んだのは、私のせい―――。
「ごめんね、さき。私はやっぱり、強くないんだ。素直でも、いい子でもない。さきのところに行く。さきのこと裏切ってまでこんなの、都合がいいよね。」
多分、正直のこのことを話したらさきは怒って私のことを嫌いになってしまうかもしれない。でもいいんだ。もう二度と、さきの手を振り放ったりしない。どんなに嫌がられても、ずっとさきのそばにいる。もう誰も寄せ付けない。私がさきを守るんだ。