私たちは互いにただ、見つめ合った。本当は抱きしめて離したくなかったが、ただ見つめるだけでいた。
「・・・みさと、そろそろお別れだって。」
「いやだよ、いやだよ!さき!!!」
「聞いて、みさと。みさとは私がいなくても強く生きていける。みさとは実は誰よりも頑固で一度決めたことは絶対にやり遂げる、すごく素直でいい子だって私知っているよ。だからみさとにもすぐに新しい友達ができる。今はまだ寂しいだろうけど、強く、強く生きて。」
「さき・・・。」
次の瞬間、さきの姿がだんだん薄れていくように感じた。
「さき!!消えちゃいや!!!まだ・・・まださきに話せていないこといっぱいあるから!!!だから待ってよ!!!」
「・・・みさと、元気でね。」
「さき!!!」
叫んだ瞬間、目の前を列車が通過した。あまりの風圧に後ろに吹き飛んだ私は体重を支えきれず、思いっきりしりもちをついた。周囲の目は相変わらず私を変な人として見ている。
・・・まただ。この空虚感。誰もわかってくれない誰にも埋められない、ただ一人で向き合うしかない胸の奥の奥にある、大きな大きな穴。きっと私はいつかこの穴に飲み込まれて、私を失うんだ。いつ訪れるかわからない、訪れないのかもしれない。
ただ、この真っ黒で深くで残酷な闇は徐々に私の心をむしばんでいくことだけはわかる。
「・・・そうだ。」
この状況から脱出するためには
「もっと早くこうしてればよかったんだ。」
誰かの救いの光を求めるのは、無意味だ。
「こうすれば、さきともまた会えるし、こんどは離れることはない。」
この闇に私がむさぼられるなら、こっちから私を食ってやろう。
「・・・待っててね、さき。私、一度決めたら揺るがないんだよ。」
もうさきの声は聞こえない。だから、こっちからつかみに行く。