いつもの駅のホームで、だった。最近ふと気づくと何も考えておらず、ただ頭が真っ白な状態で時間が経っていることが多かった。

周りの音は聞こえているようで聞こえていない、そんな中でただ一つ、その声質だけはっきりと聞き取れた。

「・・sと・・・みさと!」

「なん・・で。なんでさきの声が聞こえてるの・・・?」

「最近みさとが暗い顔していたの、見てたから。心配になっちゃって。」

「さき・・・。誰のせいだと・・・」

急に視界がぼやける。きっと私はずっと、ずっとこうしたいと思っていた。誰にもすがれず、一人きりで堪えていたものがどことなく、そしてとめどなくあふれ出す。

「もう・・・。そんなに泣かれたら、また離れたくなくなっちゃうじゃん。」

「もう、いやだよ。ねえ、ずっと一緒にいようよ。さき、どこにいるの?」

「ダメだよ。みさとは。」

「そんな・・・さきは私がいなくても平気なの?」

「平気なわけないでしょ。みさとがこんなに落ち込んでいるなら余計にそばにいたいよ。でも・・・ダメだよ。」

さきが言わんことはわかっていた。さきは私にはさきのいるところへはまだ来てほしくないのだ。さきは幼稚園の頃からずっと一緒の親友で私の唯一の友達だから、何を思っているのかなんて手に取るようにわかるのだ。だから・・・

「わかったよ。だからさき、一つだけお願い。」

「なに?」

「私に、さきの姿を見せて。最後に見たさきの姿は笑ったさきの姿にしたい。」

「・・・わかったよ。前、向いて。」

そう聞こえて見上げた先には、ずっと、ずっとずっとずっと会って抱きしめたかったさきの姿があった。

「さき・・・会いたかったよ。」

「私もだよ、みさと。」

さきも私も、笑っているのか泣いているのかよくわからない顔になっている。周りの人は明らか様にこちらを不気味がっているが、今はそんなことどうでもよかった。また、さきに会えるなら・・・。