鮮血が迸る。

龍一郎の白い空手着を染める真っ赤な血。

『内臓は…辛うじて無事か』

禿鷲が僅かに狼狽する

誰も。

シオン一味と禿鷲との戦いの時には、彼の時凍えに反応できる者など誰もいなかった。

同じ力を持つ龍鷺郎でさえ、禿鷲にはまるでついて行けてなかったのだ。

それを、3割4割の速度とはいえ、このティーダという小僧はやってのけた。

恐らくは天神学園最速である禿鷲を、速さで凌駕するという芸当を。

「まだだ」

振り向くティーダ。

「禿鷲、時凍えを…!」

傷口を庇いながら龍一郎が叫ぶが。

『無理だ、ついて行けん!』

禿鷲が叫び返す。

またも擦れ違い様の斬撃!

それは最早、鎌鼬に等しいほどの切れ味を持つ風。

開いた傷口はあまりに鋭利で、血が噴き出すのが刹那遅れるほどだった。