近藤さんを見送った土方さんは、
私と斎藤さん、そして舞を部屋に呼んだ。


「斎藤、流山にいる隊士を引き連れて会津へと向かえ」


部屋に集まるやいなや、開口一番に斎藤さんに指令を告げる。

「加賀、お前も斎藤とともに行け。

 俺は江戸に戻り、陸軍総裁に目通りを願う。
 近藤さんのことを頼んでくる」

「それでは、一足先へ。
 準備が整い次第、移動します」

斎藤さんは土方さんにお辞儀をした時、
懐から近藤さんの羽織で仕立てたお守り袋を取り出す。

「斎藤、局長からだ。
 これが……お前だな。

 近藤さんの羽織で託された想いだ。
 そこに各隊士の名前が書いてある。

 それを手掛かりに、手渡してやってくれ」 


そう言って、お守り袋を斎藤さんへと手渡す。

「承知」

短く言葉を告げて、斎藤さんは部屋を後にした。
斎藤さんに続いて、舞も部屋を出ていく。


「さて、山波。
 お前はどうする?

 俺と一緒に来るか?
 それとも斎藤や加賀と一緒に会津へ行くか?」


土方さんはそう言って、まっすぐに私を見た。



「一緒に行きます」

「わかったよ。
 なら、とっとと準備してこい。

 すぐに出る」



こうして、屯所内から近藤さんの姿が消えた流山の地で、
私たちはそれぞれの道を歩き始めた。