「山波君……」


少し驚いたように顔を見つめかえす永倉さんに、
戸惑ったように頭を掻きながら、目をさまよわす原田さん。


「偉そうなこと言ってすいません。
 多分、永倉さんも原田さんも、意味なく別の道を行こうとするはずないと思うんです。

 だけど私は、山南さんと約束しました。
 山南さんの分まで、新選組のことを見届けるって。

 だから私はお二人に聞かずにはいられません。
 私が知らない時間に、何があったのですか?」

「話そう。
 だから今は山波君、その刀をおさめてくれないか」


永倉さんの言葉に花桜はゆっくりと二人に向けていた刀を、
鞘の中へと戻した。


「ねぇ、立ち話するものじゃないでしょ。
 そうでしょ、斎藤さん。

 私たちも花桜と一緒に話を聞きたい」


私の言葉で一行は話し合いが出来るよう近くの寺の一室を借りて、
円を囲むように座った。


「さて、何処から話すか……。

 斎藤君が近藤の指示に従って別行動をした後も、
 我らは近藤さんと共に行動していた。

 ちょうど吉野宿まで戻った頃だろうか。

 俺と左之に残された隊士たちを一任すると行って、
 近藤さんは一足先に江戸へと早馬で戻った」

「あぁ、近藤さんは土方さんと合流したくてな。
 後は今後の指示を仰ぐって言ってた。

 オレも新八も、あの瞬間、近藤さんに大切にしている新選組を託された。
 そう思ったら、嬉しくてな」

「その後は、そこにいる隊士たちも何度も何度も話し合ったさ。
 新選組として……、今の俺たちが為すべきことは何か……。

 答えは一つしかなかった。
 俺たちを官軍にした新政府軍を一泡吹かせたい。

 だが今のままではダメだ。
 訓練も何もしていない、一般の農兵たちをどれだけ集めても、
 先の戦の通りだ。

 あの戦いで命を落としたものも、犬死でしかない。
 そんな戦いを幾ら続けても、未来はないだろう」



そう言って永倉さんは話しを続けながら、胸元で握りこぶしを作る。
その姿から悔しさが伝わってくるようだった。