「敬里」

「二人も来たんだ」

「そりゃ、ついていくわよ。
 私は山南さんの代わりに、ちゃんと未来を見届けるって決めてんるだから」

「私も行くわよ。
 ちゃんと私の中の約束を叶えなくちゃいけないもの」

「んで敬里、あんたは大丈夫なの?」

「大丈夫って何がだよ。
 その言葉、花桜に返すぜ」

「私は大丈夫よ。山南さんのことも丞のことも乗り越えて、
 ちゃんと歩くって決めたんだから」

「あぁ、そうかよ。
 好きで厄介ごとに顔突っ込んでんじゃねぇよ。ったく。
 斎藤さんに用意してもらった長屋で、普通に平穏に暮らすことだって出来るんだぞ」

そう敬里は昨日までの生活を声に出す。


「でもそれは偽りだもの」

「偽り?」

「私たちに、まだ出来ることがあるなら、ちゃんとそれを私も見届けたい。
 私にも私の中の誠が出来たもの。
 皆と一緒に居て」


私がそう言い切ると、敬里は溜息を盛大に吐き出した。
その途端、ゴホゴホと咳をする。
 
「敬里?あんた……」

「風邪だよ。風邪。熱は出てないからさ。
 冬はこれだから嫌なんだよ。

 さて、二人とも少し俺について来てよ」


そう言って、口調が沖田さん口調へと変化した敬里は
私たちの前を先導していく。


敬里に連れられて向かったのは、見知らぬ屋敷の中。
その屋敷の一室へと先導したアイツは、ゆっくりとふすまを開いた。

その部屋の中には、二着の女性用の洋服。


「これ、お前たちの。
 近藤さんと土方さんから。

 俺はお前らに、これを渡すかどうかの判断を任されたんだ。
 ずっと渡さないでいようって思ってたんだけどな。

 花桜にも舞にも危険なことなんてして欲しくねぇからさ。
 けど、俺が渡しても渡さなくても、お前らついてきそうだし。

 だったらその覚悟を認めたってことにしようかなって思ってさ。
 これに着替えて、他の隊士たちの前に顔出せよ。

 先に行ってるから」


敬里はそう言うと、その場を後にする。
残された私たちは、着物を脱いで誂えられた洋服へと袖を通した。

お互いの愛刀を持つ。


「舞、覚悟はいい?」
「花桜こそ」


お互い顔を見合わせて、アイコンタクトを送りあうと同時に頷いて、
その部屋から隊士たちが集まっている広場へと顔を出した。

ここに来るまでに、甲陽鎮撫は本来、彰義隊に依頼されるはずだったが拒絶されて、
新選組へと依頼されたなんて噂も耳にした。


新規隊士を迎えた隊員200名で、
大砲2門・ミニエー銃500挺を与えられてその任務は始まった。