「隊長、霞ヶ丘第一病院受け入れ可能です」

「わかった。
 受け入れ先の病院が決まったようだ。
 時間があれば、救急車の中で詳しく話を聞かせてもらえないか?」


救急隊の言葉に頷いて、私と花桜のお祖父ちゃんは救急車へと一緒に乗り込んだ。



サイレンを鳴らしながら走りだした車内。
山崎さんの体はすでに救急救命士と思われる人が、
病院と連絡しながら、気道確保などの緊急措置を始めていた。



「岩倉さんが気が付いた時に、こちらの人に息はありましたが?」

「息?
 えっととっさのことで、そこまでは覚えてませんが、首で弱いけど脈は感じられました」

「弱いながらも脈はあったんですね。
 心停止を起こした様子はないんですね」

「うーん、すいません。
 そこまでは私にはわかりません」


そんな会話をしている間に、救急車は病院の救急玄関へと到着して、
慌ただしく山崎さんを乗せた救急車が、処置室へと運び込まれていく。


救急隊の人たちと病院の人たちが慌ただしく動き回る中で、
私と花桜のお祖父さんは処置室近くのソファーへと腰を下ろす。


山崎さんは運び込まれたはずの処置室から、
すぐに運び出されて手術室の方へと運び込まれていく。


山崎さんが行く場所へと付き添う様に移動した私たちは、
再び手術室の近くのソファーで腰を下ろした。




すると今度は警察の人たちが近づいてきて、
山崎さんを見つけた経緯を詳しく訪ねてきた。



山崎さんっと言う名前は使えない。

私たちは先ほど救急隊の人たちに話したように、
一切面識のない、神社で参拝中に倒れているのを発見した行きずりの人と言う形で説明した。



警察関係者が姿を消した後、
私はどうしてあの場所に、花桜のお祖父さんが来てくれたのかを疑問に思い問いかける。



「どうして、花桜のお祖父さんはあの場所に来てくださったんですか?」

「あぁ、あの場所で沖田総司だった敬里を見つけたんじゃよ」


えっ?
総司がこの現代で発見された場所?


「敬里と呼んでもいいかな」


お祖父さんの言葉に静かに頷く。


「敬里はあの場所で、敬里の服を来て倒れていた。
 それを参拝中に見つけたんじゃよ。

 わしはすぐに顔を見て、鏡の中で見たあの人だと思ったさ。
 だが身に着けている服は、今朝、敬里が身に着けて出掛けたものじゃった。

 そして倒れていた傍にあった鞄の中にある財布の学生証の写真が、
 敬里の名前と共に記されていた顔は、あの人の顔だったんじゃよ。

 それ以来、あの人は敬里じゃよ」



そう言いながら、信じがたいことを言葉にしたお祖父さん。