花桜の為に生きてて欲しい。
そう望んだのは私。


あの世界で必死に頑張ってる花桜を知ってる。
悲しい別ればかりで、沢山の試練に立ち向かってる親友が、
無事に帰って来た時に、山崎さんが生きててくれたら心から笑ってくれる。

そんな気がするから。


だけど……それは、ある意味歴史を変えるかもしれない。



総司はこの世界にやってきた。
だけど……総司の代わりに、この世界からは敬里が幕末に旅立った。


総司は、他の誰でもなく、山波敬里としてこの世界に存在していて、
敬里も幕末では沖田総司として存在している。


だけど山崎さんは?




戸惑いの気持ちが膨らんで、どうしていいか立ち尽くしていた私の傍に、
「またか……」っと聞きなれた、花桜のお祖父ちゃんの声が聞こえた。



ゆっくりとした足取りで近づいてきた花桜のお祖父ちゃんは、
山崎さんの傍へと近づいて、傍に座り込んだ。



「怪我をしているね。
 この人は、花桜が大切に思っていた人だね」

「はいっ。
 新選組の監察方、山崎さんです」

「さて、このままじゃ服装が服装だからね。
 病院にも連れていけないねー。

 後は、安全な場所へと移動させないとね」


そう言って花桜のお祖父ちゃんは手にしていた紙袋から着替えの現代の服を取り出して、
山崎さんの服を着替えさせ始めた。

慌てて私も着替えの介助に入る。
するとそのまま、お祖父さんは119番に電話をかけ始めた。


「瑠花さん、もうすぐこの場所に救急車が来る。
 この状況下に、瑠花さんを巻き込むわけには……」


私を気遣ってくれるお祖父さんの言葉に首をふって、私は自宅へと電話をかける。
すぐにママが電話に出てくれる。


「ママ、今日少し帰りが遅くなるかも。
 今、さっきの落雷で被害にあったのかな?

 倒れてる人を見かけて、救急車呼んだの。
 多分、いろいろと聞かれるかもしれないから」


そう言った私の耳に、近づいてくる救急車のサイレンが聞こえる。

視界の先では花桜のお祖父ちゃんが山崎さんを抱き上げて、
杉の木から少し離れた場所へと移動させている。


「あっ、ごめん。
 ママ、救急車来たみたいだからきるね」


慌てて電話を切ると、駆け寄ってくる救急隊の人に「こちらです」っと声をかけた。

救急隊の人たちは慌ただしく山崎さんの様子を確認していく。



「この包帯はあなたたちが?
 それにしては、汚れてるなぁー」

「あっ、わしらはこの人が倒れていることに気が付いた神社の参拝者じゃ。
 先に瑠花さんが見つけてな、孫の友達の声に来てみたら、この様子じゃ」

「第一発見者は、貴方なんですね。名前は?」

「岩倉瑠花といいます」

「君、高校生?」

「はい。現在、聖フローシア学園に通っています」



私が救急隊の人に質問されている間に、
ストレッチャーに乗せられた山崎さんは、救急車へと運ばれていく。