「貴女は花桜ちゃんのお友達ですか?」
ふと、告げられた名前に思わず禰宜さんを見つめる。
「はいっ」
「そうですか?
私は、花桜ちゃんのお祖父さんと懇意にしてましてね。
何時も敬介もお参りに来てますから……。
神様は見守ってくださいます。
さて、お茶のおかわりはどうですか?
甘いゼリーもありますよ」
そう言って、花桜のお祖父さんのお知り合いの禰宜さんに、
麦茶とゼリーをごちそうになって私は家へと帰宅する。
そのままお風呂でシャワーを浴びて着替えを済ませると、
再び、花桜の家へと向かった。
「お邪魔致します」
何時ものように声をかけると、お二人は暖かく私を迎え入れてくれる。
鏡は船旅を続けていて、花桜は負傷して動けない山崎さんの傍で、
多分、熱を下げるためなのか……何度も何度も、額に手ぬぐいを濡らしてあてているみたいだった。
「あの子の試練の時も近いですね」
「あぁ、そうじゃのー。
ただ、ばーさんや。今回は敬里もいるんじゃて支えてくれるじゃろう」
「えぇ、そうですねー」
そう会話する二人。
花桜の試練の時、それは言わずと知れた山崎さんの旅立ちの時間。
山崎さんは負傷した怪我がもとで亡くなり、紀州沖で水葬されたと伝えられてる。
そんな時間が間近に迫った鏡の中を見つめるのも辛くなって、
私は逃げ出すように総司が入院しているパパの職場でもある病院へと向かい、
面会手続きをして病棟へと立ち入った。
何時ものように総司の病室へと辿り着くと、
トントンとノックしてドアを開ける。
総司はベッドの上から、窓越しに外を見つめていた。