あんなに大好きだった幕末のドキュメンタリーも、アニメも、今は楽しんで興味本位のままで見ることが出来なくなってた。



……花桜……。


そのままずっと見るのも心が追い付かなくて、私は「あっ、勉強しなきゃ。パパ、好きなチャンネル楽しんでね」っと
自分の部屋へと戻った。


そしてそのまま自分の部屋へと入ると、ドアを閉じてそのまま真っ暗な部屋の床に座り込む。


手に握りしめるのは携帯電話。



『花桜へ

 元気してますか?
 いつも花桜のお家で大切にされてる鏡で、幕末の世界の物語を見てます。

 私も総司も、現代でぼちぼち過ごしてるよ。
 総司は今、山波敬里としてこの世界に受け入れられて、パパの病院に入院して結核の治療をしています。


 花桜たちは大変だね。
 それら山崎さんのこと、鏡で見てびっくりしました。

 花桜から山崎さんを奪わないで。
 神様、山崎さんを助けて。

 って、夜が明けたら氏神様にお参りに行きたいって思ってます。

 私はこの世界で、花桜の帰りを待ってるから。
 舞や沖田総司として生きてる敬里にも宜しく。


 瑠花』



私と一緒に旅をした携帯電話を開いて、届くはずのないメールを花桜に向けて送信する。

そしてそのまま、ベッドに持たれるように体を移して目を閉じた。


翌朝、日の出とともに私は家を飛び出して、
何度も花桜や舞と通い続けた氏神様の元へと向かう。


一気に階段を駆け上がると乱れた呼吸を整えながら、
お賽銭を入れてゆっくりとお参りしながら願い事を繰り返す。


総司の結核が治りますように。
花桜が幸せになりますように。
舞が幸せになりますように。
敬里が幸せになりますように。


願い事の後は、覚悟を決めてお百度石の方へと歩いていく。


何かあるたびに、花桜がやっていたお百度参り。


本当は百日詣で毎日お参りに行くのがいいんだけど、
それが出来ない人は、そのお百度石を使ってお参りしてもいいって言ってた。


人目につかない時間帯に、裸足になって、白装束でお参りする。
生憎、白装束ってわけにはいかないけど真っ白いワンピースで許して。


っと、一周目からゆっくりと歩き出して、本殿で参拝してお百度石へと戻り、二周目。
それを何度も何度も繰り返し続けて一時間少しすぎた頃、ようやく百周目のお参りが終わる。


その頃になると日が高くなっていて、気が付くと一般の参拝者さんもお参りを始めてた。


全然気が付かなかった……。



「少し社務所でお茶はいかがですか?」


声をかけてくれた禰宜【ねぎ】さんに促されるまま、
私は社務所へとお邪魔した。


すかさず、冷蔵庫で冷やされた麦茶がグラスに注がれて運ばれてくる。


「どうぞ」

促されるままに手に取って一口頂くと、
喉がカラカラに乾いていたことに気が付いた。


「この度は早朝より、お百度参りをさせて頂きまして有難うございました。
 おかげさまで、無心にお参りすることが出来ました」


そう伝えてから、深々と頭を下げる。