「ご無沙汰しております。
 花桜の祖父です……」


そう言いながら私が今日、泊まりたい旨の説明を私の嘘に付き合う形で母を説得してくれた。



最後に再び電話に変わった私は、「ご迷惑をかけては駄目よ」っと言葉を告げられて電話が切れた。



「……すいません……」

「その嘘もひとえに、瑠花さんの優しさから溢れるものじゃと知っておるでな。
 さて、敬里のところへと向かおうか」


家の前まで迎えに来たタクシーに乗り込むと、私たちは病院へと向かった。



何時ものようにマスクを着けて病棟へと立ち入る手続きをすると、
総司は心電図をつけられて、魘されるように汗をかきながら眠っていた。



「敬里さんの治療に使用している副作用で少し肝機能が低下してしまいました。
 
 この薬は非常に強い薬です。
 免疫力が落ちた時は、結核菌も強く牙をむきます。

 順調に回復しているように見えましたが、敬里君の体力が落ちすぎているのが気がかりですね」



そう言って、主治医は総司を状況を説明してくれた。



「治療は続けられますか?」

「今後の検査結果にもよりますが、治療を中断せずに今縛らくは様子が見られたらと思っています」

「孫を宜しくお願いします」


そう言ってお祖父さまは、お医者さんへと頭を下げた。



私は総司が眠るベッドサイドへと近づいて、
濡れタオルで顔や首筋の汗を拭きとって、そっと右手を両手で握りしめた。



「……近藤さん……ダメですよ……」

「一番隊、続け……」


うわ言の様に、呟き続ける総司。



時折、苦痛そうに顔を歪めながら今もこの場所で闘病を続ける総司。