やがて井上さんの体は板に乗せて寺へと運ばれ、
そのまま何処かへと連れられて行った。


寺の一角に掘られた穴へと埋葬される井上さん。


そんな井上さんを見送る花桜たち。
私も鏡越しに、静かに手を合わせる。



山波家に伝わる鏡を見つめながら、私は今も止まらない涙を必死に手のひらで拭い続ける。




「瑠花さんや……」

「すいません……。
 井上さんの笑顔が消えてなくて……ずっと優しく見守ってくださる方だったんです。

 何度もお料理をして……」

「えぇ、えぇ。
 私も存じていますよ。

 井上 源三郎さまと言う方がどれだけ新選組を支え、瑠花さんたちの力になってくださったか……。

 花桜にもとても優しく雑務を教えてくださっていたわね。
 あの子は包丁の使い方がとても下手くそで、教えるのも大変だったと思うわ」


そう言いながら、お祖母さまは再び鏡へと視線を向けた。


鏡の中では、今も涙を流し続ける花桜を山崎さんが抱きすくめていた。


ふいに、山波家に鳴り響く電話。
暫くして、お祖父さまが私の方へと近づいてきた。



「ばあさんや、花桜を頼む。
 病院から呼び出しじゃ」

「まぁ、じいさん、こんな時間にですか……」

「あぁ。
 敬里のところへ行ってくる」

「えぇ、行ってあげてください。
 花桜は強い子です。

 沖影も力を与えてくれるでしょう」

「瑠花さんはどうしますか?
 もう日が落ちますが……」

「行きます。
 母には電話をいれるので、今日は山波家に泊まってることにしてください」


そう言うと、慌てて携帯を取り出して母へと電話をかける。


「もしもし」

「あっ、今日、花桜の家に泊まらせてもらってもいいかな。
 共通の友達が、遊びに来てるんだ。
 久しぶりに会って嬉しくて」

「瑠花ちゃん?」

「花桜の家族も泊まっていいよって言ってくれてるから」

「まぁ、本当に大丈夫なの?
 ご迷惑でしょ」


そう言って押し切られそうになっていた私に、お祖父さまが電話へと手を伸ばす。