そして総司によって屯所へと連れていかれた私は、
花桜とその場所で合流することは出来たけど、
何も出来なかった。

花桜のように家事手伝いをして、屯所内で居場所を必死に作ろうなんて思えなくて、
ただただ怯えてたんだ。

そんな私に手を差し伸べてくれたのが、鴨ちゃん。
芹沢鴨、その人だった。


歴史で伝えられている芹沢鴨は凄く乱暴な存在だって伝えられていたけど、
私にとっての鴨ちゃんは、そんなことはなくて……
鴨ちゃんとお梅さんの優しさに救われながら、
京での生活に少しずつ馴染めるようになった。

懺悔の中で私が自分の言葉で紡ぎだすのは、
鏡が映し出す映像ではなくて、
私が私として体験して学び取った現実の出来事。


鏡が映し出す映像で、どれだけ私たちの様子を見守ってくれていても、
実体験での感覚にはかなわないと思うから。



総司との出逢い、総司の存在が私の中で、
どんなふうに膨らんでいったのかを、弁明するように語り続けた。




ずっと憧れだけだった沖田総司は鴨ちゃんが亡くなった後、
お墓参りで出会った先の総司の姿を見て、
守ってあげたい存在になったこと。


憧れだけじゃなく、守りたい存在になった時、
私にとっての総司は遠い空想の人ではなくて、
手を伸ばしたら届く、近しい存在に変わった。



だから総司が吐血をした時、一緒に私の世界へ連れていきたい。
離れたくないって強く願い続けた。


私の生きる世界で、幕末よりも医療が発達している世界で、
病気を治して一緒に生きていきたいって。




「それが間違ってたのかな?

 どんなに大好きな人でも、
 私はその一線を絶対に超えちゃいけなかったのかな?


 総司が傍にいてくれたから、私は無事にこの場所に帰って来れたって
 そう思えるほどに、総司が私に生きる力をくれたの。


 でも……この世界に戻ってきて気が付いた私は肩を落とした。
 一緒に帰れるって思った現在の目覚めた場所には、総司の姿がなかったから。

 総司の姿がなくて気落ちしながらも、何か手がかりがないか、
 花桜の家へとお邪魔したんだ。

 花桜が山南敬助さんの血を引く一族だから。
 そこに手がかりがあるかも知れないって。

 そして花桜の家に行って、敬里と言う名前で総司が現在を過ごしている事実を知って驚いた。

 えっ、だったら敬里は?って思った気持ちもあったけど、
 私はすぐに蓋をしたの。

 総司と生きる時間が嬉しかったから。