瑠花っ……瑠花っ……。
 


あれっ?
この声、パパ?


すっと手首に触れる温もりに導かれるように、
ゆっくりと目を開いた。



「瑠花っ」

「瑠花さんやっ」

「瑠花さん」


そう言って私を覗き込む顔。


ゆっくりと体を起こそうとすると、
パパが支えるように手を添えてくれた。


「瑠花っ、気分はどうだ?
 
 仏間で敬里君の入った写真を畳にたたきつけようとした後、
 体が痙攣をおこして、そのまま倒れてしまったんだ。

 山波さんがお布団を貸してくれたから、
 朝までゆっくりと休ませてもらおう」


そう言ってパパは私に、
この身に起きたことを話してくれた。


「あの……鏡は?」


その問いかけに、花桜の
お祖父さまは「会津戦争じゃな」っと短く告げた。


会津降伏が近づいているのかもしれない。



花桜、舞……ごめんね。

今日だけは私も休ませて。

明日からは、また貴方たちと共に、
こっちの世界で戦い続けるから。




今だけは……私自身の心と向き合う時間が欲しい……。


私の心が壊れてしまう前に。
総司を守り続ける本当の力が欲しいから。




「ねぇ、パパ。
 話を聞いてくれる?」




その言葉を紡ぐことがどれだけ
勇気のいることかを私は知ってる。



だからあえて、一歩を踏み出すんだ。 

昨日と違う、
新しい私に生まれ変わるために。


何度も何度も、
新しい自分と出会い続けるために。




鴨ちゃんが諭してくれた、
強さの意味に少し近づけた気がするから。






「あぁ、瑠花。
 今日は、パパも泊まらせてもらうことになってる。

 心配性のママには連絡済みだよ。
 パパは瑠花の味方だよ。

 瑠花の心にくすぶる思いをパパにもわけておくれ」





パパの言葉には私はゆっくりと頷いて、
深呼吸を数回繰り返した。





総司、どんなパンドラの箱が開いても、
受け止められる強さを持って、次の一歩を踏み出すから。




今は、待ってて。


私の強さが開花するまで。
その強さに、
私自身が気が付けるまで。