30分ほど時間が足湯を楽しんだ後、
再び土方さんの元へと戻ると最初と同じようにお水を手渡す。
脱水から守るように体を潤した後、
再び元来た道を時間をかけて移動する。
旅館に戻った後は、再び傷口の手当をやり直す。
一通りの日課が終わった後は、
また土方さんは各地の情報収集の報告を待って、
自分の中で状況を消化する時間が続いた。
そんな暮らしを続けていたある日、
土方さんの元に驚くような報せが届いた。
松平容保公が家督を譲った新しい藩主。
容保公の養子、喜徳【のぶのり】様が白虎隊を率いて福良へと到着し、
滞在期間内に新選組にも拝謁の機会が許されるというお知らせだった。
喜徳様への拝謁は第一線で戦いにのぞむ斎藤さんたちが対応してくれる方となったが、
その知らせを受けて喜びを感じているらしい土方さんは、
自らは拝謁することは出来なかったけど、
出来ることをやりたいと少しずつ動き始めるようになる。
っと言っても具体的に大きなことは出来ないので、
宿陣している味方の元へと出向いては人々の力を鼓舞させるために
差し入れをする。
土方さんが宿陣に出向いて、皆と会話を交わすだけで、
少し活気づくような雰囲気も感じられた。
そうなって兵士や隊士たちのことに意識を向けてる土方さんを見ていると、
やってることは昔と変わらないんだなー。
こうやって近藤さんと二人やってきたことを、
今も自然とやってるんだなーって思うと、少し心が温かくなる。
そして土方さんも会津若松城へも登城してお偉い人との面会が行われた。
後で、その人の名前を伺うと『覚王院義観』と教えられたが、
歴女でない私には、その名前に引っかかるものはなかった。
その後も旧幕府軍の人と面談して銃のことで協議するなど、
慌ただしく過ごす日々が続いた。
ある日、私たちが滞在する場所へと尋ねてくるものがいた。
旅館の方に誘われるままに、
外へ向かうと、そこには懐かしい舞と敬里の姿があった。
「舞、敬里、お帰りなさい」
「花桜、ただいま」
「よっ」
舞は真っすぐに私に話しかけてくれるのに対して、
敬里はチラリとこちらに視線を向けて、軽く手を挙げるだけだった。
「花桜さん、土方さんのお知り合いの方ですか?」
問われるままに旅館の方へと頷くと、二人も入室を許可される。
「土方さんのところに案内するわね」
そう言うと、上り口の前で手と足を洗った後、
舞と敬里は旅館内へと足を踏み入れ、私の後ろを静かについてくる。