「対面することはかないますか?」


背後から従兄弟さんの声が聞こえる。
その声に、住職はゆっくりと首をふった。



「すでに私の胸の内の中に埋葬してあります。
 お二人には、埋葬の際にすこし切り残した髪をお渡しいたしましょう」



そう言うと、住職は建物の奥へと消えて暫くすると、
巾着袋を二つ手にして私たちの前に姿を見せた。
 


「こちらの中に、亡き近藤様の遺髪をいれてあります。
 どうぞ、今はこちらを持ってお引き取りくださいませ。

 後のことは、私にお任せください」



そう言って、住職は深々と頭を下げた。
私たちはそれぞれに、巾着を受け取って静かに頭を下げた。 




「御仏の加護がありますように……」



そういって見送って貰った場所、小さく石が一つだけ置かれていた石塚が視界に入る。


あの場所に近藤さんは眠ってる?




そんな気がした私は、
心の中、ゆっくりとその場所に視線を向けて手を合わせた。





今まで有難うございました。
お疲れさまでした。




そして、この先の未来。
戦いが続く私たちをお守りください……っと。




こうして、京での重大任務を終えた私と敬里は、
斎藤さんが待つ会津を目指して再び、旅を始めた。



大切な巾着を身につけて……。