「うへぇー。
 舞、なんであんなこと知ってるんだよ」

「えっ?
 それは、そうやって私に教えてくれた人が居るから。

 敬里よりは、かなり修羅場経験してると思うからさ。
 それより先を急ごう」



その後も私たちは順調に、京を目指して何日も何日も歩き続ける。
途中、休憩を挟みながらその場所にたどり着いたのは、
出発から19日過ぎた頃だった。



見慣れた景色は、あの鳥羽伏見の戦いで荒らされて、
今も復興のための準備が進められている。

そんな印象だった。


倒壊した建物、焼き払われた町。
まだそんな傷跡が残る場所。




私は近藤さんがいるとされる、三条河原へと足を進ませた。


敬里はキョロキョロとしながら、
私の後をついてくる。



「なぁ、舞。
 ここは?」

「歴史で知ってるでしょ。
 京の都よ。

 花桜と瑠花が、長ぐ過ごし続けた場所。
 私が、二人と再会した場所ね。


 今から行くのが、三条河原。
 敬里は少し黙っててね」


立ち止まって、後ろを振り向き敬里に言い聞かせる。


コクンと首を縦にふったのを見届けて、
私はゆっくりと深呼吸をして、その手を帯へと触れた。




この先に近藤さんがいるはずなんだ。
斎藤さんの代わりに、ちゃんと任務を果たさなきゃ。



だけど……私、どうやって近藤さんを助けたらいいんだろう。


確か三条河原にさらされているのは近藤さんの首なわけで。

どれだけこの時間に長くいるとはいえ、
首をどうやって持ち去ればいいんだろう。


今更に、そんな疑問と恐怖が沸き上がる。
そんな葛藤を抱きながら、私は呼吸を整えて三条河原へと近づいた。



鴨川沿いを歩いて、たどり着いたその場所。
近藤さんがいるはずの場所に、それは存在しなかった。



ホッとした安堵と同時に、力が抜けてその場へと座り込んでしまう。



「おいっ、どおした?
 舞?何、座り込んでんだ?」



突然座り込んだ私を気遣うように、
敬里は私の正面に座り込む。


「舞?」


敬里に肩に両手をかけられて軽く揺すられて、
私は現実を取り戻す。




近藤さんの首がなかったからって、ホッとしてる場合じゃない。
それじゃ、任務失敗。


斎藤さんの誇りは守れないじゃない。
何してるの、私。



「ごっ、ごめん。敬里。
 大丈夫。もう大丈夫だから……」


「おいっ、お前。
 こんなところで何をしている?」



三条河原で敬里と私のやりとりを目撃された人が、

私たちとの傍へと近づいてくる。