永倉さんも、斎藤さんも、新選組の中では、沖田さんと並んで3トップと言われてる腕前。

そんな二人の力をもってしてもまもなく開戦される、
鳥羽伏見の戦いは敗北になってしまう現実。



激しく打ち合っていた二人は、互いの首筋にお互いの切っ先を向けてその手合わせを終えた。



「有難うございました」


お互いをねぎらう様に互いにお辞儀をした後、
永倉さんは道場から退室していく。

そして花桜はと言えば、土方さんに稽古をつけて貰ってる?みたいだった。




「あぁ、相手が居なくなっちゃった」


小さく零して木刀を再び構えると、
ゆっくりと振り下ろす。




「加賀、相手になろう」



素振りを始めた私の正面には、先ほどまで永倉さんと手合わせをしていた斎藤さんが
向かい合わせにたって、木刀を構える。



「お願いします」


一礼すると、私はすかさず無心になって打ち込んでいく。
打ち込むたびに、一つ一つ受けてめてくれる斎藤さん。


「加賀、お前にはこの先の未来も見えているのか?
 あの舞の記憶で……」


突然の言葉に、思わず木刀を打ち落とされそうになって、
慌てて私は再び強く握りしめた。



「斎藤さん、ご推察の通りです」

「そうかっ」

「なら、お前は山波を連れて去れ」

「いえっ、それは出来ません」

「だが、お前たちは……」

「花桜もそれを望んでいません。
 そして私も、私の中の舞も、共にあることを望んでいます。
 ただ……私には、わかりません。

 江戸幕府は先の大政奉還で滅亡しました。
 そして今は、新選組が仕えていた将軍もいない。

 将軍家に仕えていた人たちも、次々に裏切って新政府についてる世の中で、
 どうして新選組だけが……って感じています。

 今の徳川家に、命をかける価値があるのかと……」




そう……。
もう一人の舞がずっと、感じ続けてた命をかける価値。
 
 
すると斎藤さんの太刀筋が一気に豹変して、
私の頬のギリギリのところにスーっと入り込んでピタリと止まった。


今まで持っていた木刀は姿を消して、
いつのまにか真剣を突き付けられていた私自身。


だけどその太刀筋から、込められた思いは伝わってきた。



仲間に対する強い思い。
目に見えない絆の形。