無心になりたい。

無心になって……ただ、
この世界に存在し続けることが出来たら、
どんなにいいだろう。



罪悪感という足枷を解き放ってしまいたい私自身と、
それを許すことに戸惑いがある私。


何も知らずに、この世界に存在し続けることが出来ればどれだけいいだろう。

そう思える私と、これから起こる出来事を知っているからこそ、
この経験が花桜を向こうの世界へと帰らせる手助けが出来ると思える私。



グタグタ考えても、答えなんて何も出てこない。
起こってしまった現実は、歪めることなんて出来ない。


だからこそ、私は……自分で、きっちりとケジメをつけなきゃいけない。
ただそれだけ。



それしかないんだからっ!!


自分自身に暗示をかけるように、
何度も同じ言葉を繰り返しながら、花桜に打ち込む力を強めていく。


次第に花桜を押すように攻め始めた私の太刀筋は、
花桜の胸元で、その切っ先を寸でのところで止めた。



「お見事」


いつのまにか、そこには斎藤さん、土方さん、永倉さんたちが姿を見せていた。



「あぁー、悔しい。

 結構、最初は余裕だったのに……剣が迷ってるなぁーって思ってたのに、
 次の瞬間から一気に攻めだすんだもん。

 油断しちゃった」



花桜が大声でいったその言葉に土方さんが声を荒げて、

「山波、てめぇ、何時から油断できるほど強くなったんだぁ?
 てめぇが油断なんて、まだまだ早いんだよ。

 今から戦いが始まるってのに、そんな気持ちじゃ足手まといだ。
 てめぇ、さっきのが実戦だったら今頃、死んでんだぞ。
 その自覚はあんのか?

 てめぇの根性、叩き直してやる。
 そこに直れや」

なんて説教モードに突入してる。




土方さんに怒鳴られて逃げ出してる花桜にそっと心の中で合掌をしながら、
私は手合わせをしてる、斎藤さんと永倉さんに視線を向ける。