入学式から数週間が経って。
たまたま移動教室先の席が隣だった子が、うちのペンポを見て話しかけてくれた。
うちのペンポには好きなアニメの缶バッジやストラップを付けていたから、すぐに気付けたんだろう。
頷けば話はどんどん弾んで。
彼女は、三浦唯(みうらゆい)、そう名乗った。


その日のお昼時間。
お昼一緒に食べない?そう誘われ、学校の近くにある公園へ向かった。
そこへ向かっている間、話していたんだけれど何だか唯ちゃんはうちと結構性格が似ているようで。
一緒に居て、とても気楽だったんだ。



「ねぇ、夏菜はさ、この学校に知り合い居るの?」
「…何で?」
「いや、こういう…何ていうの、専門?じゃん、ここ」

だから知り合いひとりも居ないんだよね、あたしは。
そう言う唯ちゃんの言葉に普通はそうだよな、なんて考えながら。

「一応…居るよ」
「まじ?コース何?」
「確かダンス…だったかな?」
「まじか!男?女?」
「男」
「まじか!!イケメン?格好いい?それとも可愛い系?」

……え、どれだろ…。
どれも何か違うような…。
特別イケメンな訳でも無い…と思うし。
可愛い系では無い。絶対に。

「見れば分かるか!名前は?」
「へ?えーっと…」

名前…教えちゃって、いいのかな…。
でも何となく唯ちゃんの雰囲気に圧倒されて名前を教えてしまう。

「春坂塁っていうやつ…」
「春坂くんね、おけ、覚えた!」

なんて笑う唯ちゃんは、少し悪戯っぽく笑って続けた。

「今から見にいこーよ、夏菜!」
「えぇ…?」