解散、ということになり私は控え室に向かって歩き始めた。


ちらっと拓夢を見ると、監督と話をしていた。





帰る支度をして控え室を出ると扉の向かいの壁に拓夢が寄りかかって立っていた。


「桜、おつかれ」


「お疲れさま!

…拓夢くんごめんね。転んだのは私のせいなのに、笑ったりして…」


「…ん?あー、いいよ。
桜が泥まみれにならなくて良かった」


蕩けそうに甘い笑みで、温かく微笑む。

…この人は、どこまで優しいんだろう。





「…あのさ、この前のことだけど……」

「この前…?」


拓夢が息を吸い込むのが聞こえた。




「やっぱり俺、桜の事が好きだ…!

着飾らないで、自分自身を出している桜に惹かれた。

…さっき、桜が俺を見て声を出して笑ってるの見て、すげぇ嬉しかった。バカみたいに、嬉しかった。泥だらけになって良かったとすら思った。



……本気なんだ。

本気で、好きだ…」






涙が、出た。