「お互いリラックスした感じで。会話してもいいよ」
監督が言った。
今回のCMは、楽しいイメージにするらしい。
私は拓夢と手を繋いだまま、少し海を眺めた。
「綺麗……」
海は、昔よく来た。
家族で…
「桜…」
「ん?なに…っきゃあ!」
拓夢の方を向いた途端、足を砂に引っ掛けた私はバランスを崩した。
「ちょ、桜!」
そして手を繋いだままだった拓夢を道連れにして、地面に倒れこんでしまった。
――が。
「あぶねぇ…」
「…痛…くない…」
咄嗟にぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開くと、拓夢のほどよく筋肉のついた綺麗な腕で抱きしめられていた。
顔を上げると、泥だらけの拓夢。
「………。」
「………。」