「よっ、砂名、はよーっ。一緒に行こうぜ」

隣の家から出てきたのは、高岩大悟、17歳。
私、水野砂名の幼なじみだ。

「うん、おはよう」

たどたどしく返す。

いつも大悟と話すときは緊張してしまう。

それは、彼がやさしくて人気者だから。
太陽の日をさんさんと浴びて輝くひまわりのように。

私みたいなふつうの、悪く言えば面白みのない人間にはつりあわない、そんな風に思ってしまう。

でも、彼は幼稚園の時から変わらない。
毎朝私に声をかけ、一緒に登校する。
そんな習慣になっているのだ。

学校に近づくと、男女共に次々と声をかけられる。

「よっ、お二人さん、今日も仲いいね」
同じクラスの男子が茶化すように声をかけてきた。

こんな時、私はいたたまれなくて、しょうがなくなる。
誰が見たって、大悟の隣にはふさわしくない自分がいること。

「やめろよ!そんなんじゃない!」

大悟が声を張り上げる。
周囲ははっとして、静まり返った。

「わるかったよー」

ふざけが過ぎたと謝るクラスメイトをわき目に、「ごめんな、砂名」、と声をかけてくれる。やさしい大悟。

誰にでもやさしい。私にだけじゃなく。

それが誇らしい。反面、少しさみしい。

私が特別な訳じゃない。私はただの幼なじみ。