「───黙っててごめん。
芦田と付き合う前のことだし、わざわざ言う必要もないかと思ってたけど、やっぱり気分悪いよな」


青山さんたちがいなくなった後、小林くんがテーブルに打ち付けそうな勢いで頭を下げるので、私は慌てて首を振った。


「全然怒ってないから顔上げて」


話を聞けば、青山さんが試写会のチケットを知人からもらって、以前から見たがってた小林くんを誘ったのだとか。


二人でデートみたいなことをしてたのはもちろん面白くないけど、付き合う前のことに目くじら立てても仕方ないし。
何より、しゅんとしてる小林くんが可愛いからこの調子だと何でも許してしまいそう。
なんて言ったら、まきちゃんにまた都合のいい女にされるって怒られそうだけど。


「でも言ってくれれば良かったのに。
見てる間、退屈だったでしょ」


「そんなことないよ。
───むしろ今回の方が面白かった」


え?どういうこと?
予想外の言葉に私が眉をひそめると、小林くんは苦笑しながら続けた。


「話が進むのと一緒に芦田の表情がクルクル変わって、気付いたら目が離せないのなんの」


嘘!
私が映画に夢中になってるときの顔、見てたの?!