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「面白かったね」


カフェでランチをとりながら、つい我慢できずにさっき見た映画のパンフレットをめくる。
まだ興奮の冷めない私に、小林くんはコーヒーを飲みながら苦笑してる。


「うん。
すごく面白かった」


見に行った映画は、手に汗を握るSF大作。
映画が始まる前は、二人きりだと緊張して映画どころじゃないかもと思ってたけど。
いざ始まってみるとハラハラドキドキの連続で、気付けばポップコーンを食べるのも忘れるくらい夢中になってた。


「あっ、ケンタじゃん」


声に気付いてパンフレットから顔を上げると、小林くんの友達がこっちにやってくるのが見えた。
残念ながら青山さんも一緒。


悔しいけど、青山さんは私服もかわいい。
今日は目一杯おしゃれをしたはずなのに、途端に自分の服が色褪せて見えてしまった。


「もしや、噂の彼女?」


「まーね」


友達には、私のことをどんな風に話してるんだろう。
内心ハラハラしながらも、とりあえず会釈する。


お試しで付き合ってることはできれば青山さんには知られたくないんだけどな、なんてチラリと彼女の顔を見たとき。


「───あれ。
これ、この間私と行った映画じゃない」


青山さんがパンフレットを指差して言った。


そんなはずない。
だって、まだ公開して間もないもん。


「2回も見るなんて。
相当気に入ったのね、その映画」


小林くんを見ると、気まずそうに目を逸らしてる。


うわ。
これ絶対、二人で見に行ってるわ。