「何だよ機種変って」


「だから、他に素敵な子がいたら、乗り換えるのも小林くんの自由だってこと」


我ながら例えが上手いと思ったのに、予想に反して小林くんは本気でムッとした顔をした。


「乗り換える相手なんていねぇよ」


嘘つき。
小林くんはかっこいいし、人懐っこいからモテるし。
周りにも青山さんみたいな美人がいるじゃない。


「だいたい、大丈夫とか言って、お前泣いてるじゃんか!」


「だってそれは…、小林くんのことが好きだから───」


堪えきれず、思わず涙が頬を伝った瞬間。
小林くんが、あー、もう!と私を抱き締める。


初めて包まれた小林くんの温もりに、余計に切なくなる。
何でこんなときに抱き締めるのよ。
私のこと振ったくせに。


「小林くんのバカ!
こんなの反則…」


可愛さ余って憎さ百倍。
私が思わず小林くんを叩くと。


「バカはどっちだよ、最後まで聞け!
俺だって芦田のことが好きなんだよ」


小林くんは私の腕を掴んで、まるで私を諭すように続けた。