「芦田、待って」


必死に走ったつもりでも、あっという間に小林くんに腕を掴まれてしまった。
我ながら運動神経の悪さに呆れる。


「待てって。
お前、絶対誤解してるだろ」


小林くんは荒い呼吸でそう言う。


誤解なんてしてない。
弁解なんて聞きたくない。


「大丈夫!」


私はできるだけ笑顔を作って言う。


「始めから、お試しって言ったの私だもん」


そうだよ。
小林くんの優しさを利用したのは私。


「お試し契約だから、気に入らなかったら解約してもいいって言ったじゃない」


ふいに青山さんの顔が浮かぶ。


「なんなら、機種変更しちゃっても大丈夫だから」