一瞬辺りが沈黙に包まれたのち、小林くんは不機嫌そうに言う。


「駄目。
芦田の髪に触っていいのは俺だけ」


まきちゃんがとっさに私の体操服を引っ張る。
分かってるよ、まきちゃん。
今のはもしかしなくても、小林くんが嫉妬してくれたってことだよね?


自分だってあの日無遠慮に触ってきたくせに、自分のことは棚に上げて偉そうなことを言う小林くん。


そのいつになく真剣な声に、胸が早鐘を打つ。


ねぇ、小林くん。
そんなに風にされると、私期待しちゃうよ?
私のこと、前よりずっと気にかけてくれてるって。
本当の彼女になれる日が近付いてるのかもしれないって。


「じゃあ。
また放課後にね」


一緒に帰る約束をして、小林くんたちと別れる。
まきちゃんにいじられつつ、ご機嫌な気分で更衣室の扉を開けると。
既に着替えを終えて身だしなみを整えていた青山さんと、鏡越しに目が合った。