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それからしばらく経ったある日の午後。
体育の授業が終わって、まきちゃんと更衣室に向かう途中、下駄箱で上履きに履き替える小林くんのグループと会った。


「お疲れ。
女子はバレーボールだっけ。
いいなー屋内」


小林くんは体操着をバタつかせて、手で扇ぎながら言う。外は日差しが強かったから相当暑かったみたい。


「うん。男子はサッカーだもんね」


うちの高校の体育は2つのクラスの合同でやるから、体育だけは隣のクラスと一緒の時間割り。
炎天下の中グラウンドでサッカーは嫌だけど、男女合同なら小林くんの勇姿が見られたのに、と思うとちょっと残念。


「あ、ポニテかわいい」


ふいに、小林くんに髪をそっと触られてドキッとする。
いや、むしろ小林くんのその笑顔の方がかわいいです、なんて打ちのめされそうになりつつも、ポニーテールにして良かったと思う。


「やっぱり芦田の髪、気持ちいい」


「どうせチャッピーのしっぽみたいって言いたいんでしょ?」


初対面で褒められて浮かれたのが、昔飼ってた犬扱いだったこと、実は結構根に持ってたりして。
まぁ、それがきっかけで小林くんと仲良くなれたんだから、別にいいんだけど。


なんて私たちが笑い合ってると、小林くんの隣にいた男の子がさりげなく私の髪に向かって手を伸ばした。


「へー。
俺にも触らして」


するとその次の瞬間。
小林くんはパチンとその手をひっぱたいた。