おかしなトラックだった。
牛や豚を輸送するトラックなのだ、見た目は。
でも、乗っているのは人間。
一人も一人も疲れ果てた顔をし、腕には手錠、そして鎖で繋がれているようだ。
人身売買かと思ったが、あんな堂々とした輸送は無いだろう。


気になったので近寄って聞いてみた。
「あのゥ、あなた方はどうしてトラックになぞ載っているのですか?」
くたびれて座り込んでいた女が、濁った目をこちらに向けた。
生気はない。
「あのゥ・・・」
「・・・・・・・・にいさん、早くお逃げよ。」
「はァ?」
ジャラッと鎖を引きずる音がした。
女が動いたのだ。
「早くお逃げ。・・・・・捕まっちまうヨ。」

女の手が、僕を追い払うように動いた。

「捕まる・・・?アンタ方と同じようにかい?」
気だるげに女が頷いた。
「そうサ。だから早くお逃げ。」

・・・分からない。分からないが、逃げよう。








「あァ、にいさんがグズグズしてるからさァ・・・」



後頭部に鈍器が振り下ろされた。
僕は、自分の頭が潰れる音を聞いた―――――――













人間輸送。
増えすぎてどうしようもない人間を…片っ端から捕獲する。
大統領も、政治家も、王ですら関係ない。
殺してもいいのだ。
数さえ減ればいいのだから・・・



お逃げって言ったじゃあないカ。
折角助けてやろうとしたのにさァ。
ねェ、にいさん。


薄く笑った女の隣に…頭の潰れた屍が、、、、、一体。




END