「双葉様!!」


甲高く叫び声にも近い音が鼓膜を震わせた次の瞬間、勢いよく部屋に飛び込んで来た涼音さんに部屋にいた全員が視線を向けた。

涙をボロボロと零して双葉さんの横に駆け寄った涼音さんを見て、何とも言えない気持ちが私を襲う。


……心配、と口で言いながらも私は涼音さんみたいに涙が出るわけじゃない。

所詮、双葉さんとの関係性なんてその程度と言われてしまえばそれまでだけど、こうして双葉さんを心配に思う気持ちは嘘じゃないのに

……なんて、悔しく思っている自分に気付いた。


こんな時に涼音さんをライバル視してる場合じゃないって分かってるのに、どうしようもなく心がモヤモヤしてスッキリしない。



「涼音、泣くな」

「紅蓮様……」


モヤモヤする心をひた隠す私は、泣きじゃくる涼音さんに歩み寄りそっと慰める紅蓮を見て、

やっぱり私なんかが入る隙はこれっぽっちもないんだって言われている気がしてギュッと胸が苦しくなった。


自分に気がない相手を妃にする理由を、愛してやれる自信がないからだって紅蓮は言ったけど、

紅蓮は絶対に涼音さんを"大事にする”ことは"愛する"ことにはならないのかな?