「虎太?ど、どうしたの、そんなに慌てて」
戸の向こう側。
顔なんて見えないのに、虎太の声が私の中に胸騒ぎを呼ぶ。
───ドクン、ドクン、ドクン
規則正しく、やけに鈍く低い音を奏でる心臓に落ち着けと念じるけれど……。
「たった今、双葉様がお倒れになりました」
「……え?」
耳を疑うような虎太の言葉に、今度は全身の血の気が引いていくのを感じた。
***
「た、多代さん!母様は?」
なだれ込むようにして双葉さんの部屋に入った私と姫蓮ちゃんに、多代さんは表情を曇らせた。
「……熱が酷いんです。意識も朦朧とされていて」
見るからに苦しそうな呼吸、熱のせいか赤く染った顔、朦朧とした意識の中でうなされている双葉さんを見ながら胸が締め付けられる。
「お、お医者様は?」
「お医者様も西風まで行かないと……」
「そんな!」
「それにさっき薬を取りに行かせた使いの者たち以外、光蓮様も含め皆、東州の見回りに出ております」
「嘘……みんな!?」
私の質問に、姫蓮ちゃんが涙を拭いながら首を振った。
戸の向こう側。
顔なんて見えないのに、虎太の声が私の中に胸騒ぎを呼ぶ。
───ドクン、ドクン、ドクン
規則正しく、やけに鈍く低い音を奏でる心臓に落ち着けと念じるけれど……。
「たった今、双葉様がお倒れになりました」
「……え?」
耳を疑うような虎太の言葉に、今度は全身の血の気が引いていくのを感じた。
***
「た、多代さん!母様は?」
なだれ込むようにして双葉さんの部屋に入った私と姫蓮ちゃんに、多代さんは表情を曇らせた。
「……熱が酷いんです。意識も朦朧とされていて」
見るからに苦しそうな呼吸、熱のせいか赤く染った顔、朦朧とした意識の中でうなされている双葉さんを見ながら胸が締め付けられる。
「お、お医者様は?」
「お医者様も西風まで行かないと……」
「そんな!」
「それにさっき薬を取りに行かせた使いの者たち以外、光蓮様も含め皆、東州の見回りに出ております」
「嘘……みんな!?」
私の質問に、姫蓮ちゃんが涙を拭いながら首を振った。