「主かぁ……多分、紅蓮は普通に接して欲しいんだと思うよ」

「え?」

「仕えるとか、主とか……そういうの全部突破らって。紅蓮は虎太とただ、友達になりたいんだと思う。

兄のように、虎太と普通の関係でありたいんだと思う……って、私には紅蓮の本当の気持ちなんて分からないけどさ」


私ってば何を熱く語ってるんだろう。

別に紅蓮なんかどうだっていいのに。


……でも、寂しそうに見えたから。
一人で全てを背負う背中が、泣いてるみたいに見えたから。


それを一緒に背負ってくれる人がいたら紅蓮だって、もう少し笑顔でいられるかもしれない。


「ハハッ……姉さんには負けた。ほんと、紅蓮様には姉さんがお似合い。涼音様に勝って、紅蓮様の傍にいてあげて下さい」

「な、なんでそうなるの!」

「……紅蓮様も、きっとそれを望んでる」



───頼む、俺の傍にいろ。


そう言った紅蓮の顔を思い出しながら、自分自身に問いかける。


なぜ、あのとき紅蓮を放っておけなかったのか。

なぜ、こんな半端な気持ちで紅蓮の妃の座を争っているのか。


なぜ、なぜ……考え出したら止まらない。


紅蓮のことを救う力があるなら救いたい、そう思う気持ちは嘘じゃない。

けれど、私にそんな力があるとも、この勝負に勝てるとも到底思えないまま時間ばかりが過ぎていく。