お願い、楓さん……！

信じて。
私、これからどうすればいい？

「……もう一度聞く。蘭、お前は南梨の間者か？」

「っ、かんじゃ……って、もしかして”間者”のことですか？そんな、私は南梨が何かもどこにあるのかも知りません！信じてください！私は他所からの間者なんかじゃありません！」


じっと目を見て、外へ声が漏れないように小さな声で強く強く訴える。

きっと楓さんは悪い人じゃない。


だけどもし、私がその南梨とか言うところの間者だと勘違いされたら話は別なのだろう。

伝われ！！！と祈って見つめる楓さんの瞳は、揺れることを知らず、射抜くように私を見る。

そしてすぐにフッと柔らかく細められた。

「……信じよう。異世界から来た話、半信半疑ではあるけど、蘭の目は嘘を言ってる風にも見えない」

「っ、楓さん……」

「それに、もし本当なら、今蘭がどれだけ心細いことか。しばらくは私に甘えてくれて構わないよ。男しかいないから、ちょうど娘が欲しかったし」

「うぅ……ありがとうございます……！」

「大丈夫、一度信じると決めたからには、最後まで信じぬく。安心して、私を本当の母と思って過ごしなさい」

「……っ」

「その代わり、私も手加減しないから。しっかり働きなさい。いいね？」


楓さんの芯の強さを、心の強さを魅せられて、私はただ安著の涙を流すしか出来ない。