「こっち来て適当に座って?」
「あ、いえ!私ならここで大丈夫です」
入口前にそのまま腰を降ろして、なぜか私と距離を取った虎太になぜそんなに離れるのかと首を傾げる。
「それで、話したいことって?」
「はい。東雲家に部屋を設ける話が突然のことだったので、母に挨拶も出来ないままだろうと、紅蓮様が気にして下さっております」
「……紅蓮が?」
「はい。姉さんには今日、東里に帰って母とゆっくり過ごすようにとのことでした。私が東里までお送りします」
「……そっか。じゃあお願いしようかな」
確かに、今日も東里に帰れるとばかり思ってたから、お母さんに挨拶してないなぁとか、
ちょっと心細いなぁなんて思ってたから、
紅蓮の気遣いは素直に嬉しかったりする。
……意外に優しいとこあるじゃん。
「はい。母も喜ぶと思います。……あ、紅蓮様の提案だってことは、どうぞご内密に」
「え?」
ニコリと笑う虎太に、咄嗟に聞き返せば……。
「私の提案だってことにしろ、と言われていたのをうっかり忘れていました」
なんて、絶対覚えてたくせに!
と突っ込みたくなるほどわざとらしく困ったフリをして頭をかいた。