何はともあれ、やっと自分の部屋に辿り着けたことにホッと胸を撫で下ろす。


部屋は六畳ほどの大きさで、変なほこりっぽさもなく、掃除が行き届いているように感じる。

布団や、タンス、小さな机、火を使って灯すであろうランプ。

思ってたよりずっと過ごしやすそうで、またホッとする。


自分が住んでいた世界の部屋に比べたら、

マンガ本だって、ゲームだって、テレビやスマホ、時計……

なーんにもない静かな部屋だけれど、自分だけの空間だと思うと、すごく嬉しい。

ここなら、誰に邪魔されることもないんだ。


泣くも笑うも怒るも自由。
……私の部屋。

そう思うと、東雲家で生活することにも、ほんの少しだけ前向きになれる気がした。

───ドサッ


「ふぅ……布団さいっこー。着物ダルすぎ」


布団の上にゴロンと横になりながら、パジャマに着替えたい……なんて思っていた私は、


「姉さん、虎太です」


突然、部屋の外から声が聞こえて飛び跳ねた。


すぐに虎太の声だと気付き、布団に転がった拍子に乱れた着物を寄せ合わせる。


「ど、どうしたの?」

「少しお話したいことがあって。お邪魔しても良いですか?」

「うん、いいよ」


「失礼します」と、姉弟になった今も堅苦しい虎太の言葉遣いに違和感を抱きながらも、


部屋へと入ってきた虎太に視線を向ける。