「大人しく抱かれとけよ」

「なっ……!ちょ」


私の腰に腕を回して、またしてもグイッと簡単に私を引き寄せる紅蓮に、私の顔が真っ赤に染まっているであろうことは安易に予想がついた。


───そして、紅蓮が再び目を閉じた瞬間。


「紅蓮様、おはようございます。そろそろ朝食のお時間です。広間へお越しください」


障子の向こうから虎太の声が聞こえて私の体はビクッと大きく震えた。

そんな私に気づいたのか、紅蓮は目を閉じたままフッと小さく笑った後で、


「分かった、蘭の用意が整い次第向かう」


わざとらしく私の名前を出して、廊下にいるであろう虎太に答えると、片目だけ薄らと開けて私の様子を伺っている。


「……これは、姉君も一緒とは知らず。大変失礼いたしました。では、私は先に広間にてお待ちしておりますね」

「あぁ、なるべく急ぐ」

『急ぐ』なんて言っておきながら、隣でまだ布団から出る気配がない紅蓮をキッと睨む。


「紅蓮のバカ」

「は?」


さっきの虎太の反応からして、絶対なにか勘違いされたよね?


あそこで私の名前出す必要性が全く感じられなかったんですけど!


「もう、いいから早く起きて」

「何怒ってんだよ、短気」

「はぁ?」


私のことをあっさり解放して立ち上がると、素早く身なりを整えていく。


ほんとこの男、一々腹が立つ。