「お前をここに呼んだのはゆっくり話しておきたい事があったからで、別に取って食おうってわけじゃねぇよ」


……え、何それ。


やだ、やめてよ。
なんか私が一人で勝手に勘違いして、自惚れてたみたいじゃない。


一人でドキドキして、ソワソワして、逃げ出す準備までしちゃってたじゃない。



「……何だ、違うんだ」



ついポロっと口をついて出た言葉に、紅蓮がフッと小さく笑った気がして、私は伏せていた顔を勢いよく上げた。



ちょっとだけ口角をあげて、ちょっとだけ目尻を下げて、その整った顔が確かに微笑んでいるのを見た瞬間、


カァッと頬に血が集まって、何だか一瞬で身体が火照ってしまった。



「……んだよ」


「いや、紅蓮も笑えるんだなぁって思って」


「は?」


「……今、笑ってたじゃん」


「笑ってねぇよ」


「う、嘘だ!口角上げて笑ってたよ!」


私の言葉に、今度はムッと口をへの字にした紅蓮は、小さくため息をついてからゆっくりとその場に腰を下ろした。



そして、立ったままの私を見上げて「とりあえず座れ」と告げると、自分の真ん前を顎の先で指す。


……それ、その仕草。
顎で私に指図するその態度、私的にはかなりなし。って言うかかなり気に入らない。