こっちの世界に来て、まだ5日も経っていないと言うのに、紅蓮の側女とやらに選ばれて、挙句 今夜借りたいとか言われて……。


何だか嫌な胸騒ぎを感じるなという方が無理な話だと思う。


もしかしたら、これから私を待っているのはよく時代劇なんかで見かける……



───スッ


「っ!!」


「……何してんだよ」




突然開いた障子の向こうから、紅蓮が私を見下ろすから、より一層 心臓がドクドクと速まる。



「あの……えっと、」


「……ったく、とにかく入れ。話はそれからだ」



めんどくさいとでも言いたげな紅蓮の態度に、また少しだけムッとする。

そっちが呼んでおいて何よ!って。



大人しく部屋に入った私を、紅蓮の紅い瞳が捕まえる。バクバクとうるさい自分の胸に手を当てて、負けじと紅蓮の瞳を真っ直ぐ見つめた。


大丈夫、大丈夫。
何かあったら……全力で逃げればいい!





着物がはだけようと、バタバタ音を立てて廊下を走ろうと、いざって時はこれでもかってくらい、


そうだ!自分史上最速でこの場から逃げ出そう。


そう心に誓った私は、



「……さっきから無駄に警戒しすぎなんだよ」


「え……」



呆れにも似た紅蓮の言葉に、フッと身体の力が抜けてしまった。