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知紘が高校に無事受かって、お父さんとお母さんは泣いて喜んでいる。

『大袈裟だって』とお父さんとお母さんに向けて照れ笑いする知紘が、『姉ちゃん、ありがとう』なんて言うから思わず私まで涙腺が緩んだ。


あぁ、本当に良かった。
知紘もこれで楽しい学園ライフが待って

……ん?


「あら、目が覚めたようね」

「……ここは?」


突然聞こえてきた声に、ぼんやりしていた意識が段々ハッキリとして来る。

なんだ、私ってば夢を見てたのか。

見慣れない天井。
嗅ぎなれない家の匂い。
明らかに自分のものじゃない布団と、その布団から香る洗剤の匂い。

そして、

「東里(あいざと)の離れよ。あなた外で倒れてたみたいだけど、どこから来たの?」

あい……ざと?何それ、どこだっけ。


「あ、私……あの、東里って?」

「東雲家に仕える東里家を、まさか知らないってことはないでしょう?ここは、その東里家の本家から少し離れた場所にある離れよ」

「あの、東里とか東雲家とか……何県ですか?」

「県?……ここは、東洲の深森よ」


とうしゅうの……ふかもり……?
何それ、全然分かんない。

え?待って。あれだよね?
私ってばきっと神社で熱でも上げて倒れてたんだよね?


それを親切な人が助けて、わざわざ家に連れて帰ってくれた……。

そういう解釈でいいんだよね?