そんな紅蓮の気持ちを知ってか知らずか、今まで冷たい空気を纏うだけだった双葉さんは、口元に小さく笑みを浮かべて


「では、こうしましょう」



さっきまで真っ直ぐ紅蓮に向けられていたその綺麗な瞳で、私を見つめる。

痛いくらい突き刺さる視線。
ゴクリと喉を鳴らせば、その音がやけに耳に響いた。



「西風の涼音殿と、東里の蘭殿。
どちらが妃として相応しいか……。

私がこの目で見極めさせて頂きます」



「それなら文句ないでしょ?」とでも言いたげに、口角を上げる双葉さんは、初めから分かっている。



才色兼備の涼音さんと、無才能凡人の私。





そんなの双葉さんが見極めなくたって、この私でさえ今の段階で既に分かりきっている。



勝てるわけない。



つまり、双葉さんは私に紅蓮の妃になって欲しくないってことだ。まぁ、私だって紅蓮の妃になりたいわけじゃないし、


この条件を聞いて「よし!分かった!」って言うほど、紅蓮だって馬鹿じゃないはず。


ここは双葉さんの計算勝ちってわけだ。



「……なるほど。では、涼音殿に勝てば蘭を妃に迎える話、許して頂けると言うことですね」



うんうん。
そうそう、諦めるのがいいよ、ここは。
だって相手は才色兼備らしいし。私、絶対勝てない!箸の使い方も未だに自信ないもん。