「そ、そんなの無理!だって、気持ちがない結婚なんて絶対にしたくない。紅蓮優しくないし、意地っ張りそうだし、女の子の気持ちに鈍そうだし、何よりお互い心から幸せって思えないじゃない」



……真っ直ぐに私を見つめる紅蓮に、不覚にも一瞬心臓が高鳴った。


バカみたいに顔が整ってるんだもん。



そんな顔して見つめたらやっぱり世の中の大半の女の子は心臓を簡単に射抜かれるんだろうな。



「あの、私」


いくら紅蓮と話しても埒があかないと、私は緊張に震えながらも双葉さんへ声をかけた。


けれど、双葉さんはそんな私の言葉はまるで聞こえていないかのように、再び口を開く。


「……紅蓮。3日後、西風家から涼音(すずね)殿がまいられる。もちろん、涼音殿の才色兼備の噂を聞いて、私からぜひ紅蓮の側女(そばめ)として東雲家へ迎えたいと依頼したことです」


「……っ!」



同様を隠しきれない様子の紅蓮は、一瞬 顔をこわばらせたあと、すぐにまた何を考えているのか全く読めない冷たい瞳を双葉さんへと向けた。



「勝手なことしやがって」



ボソッと小さく呟かれた紅蓮の言葉は、この場に相応しくないくだけた口調で、多分 私にしか聞こえていない。