その声の冷たさに反射して顔を上げれば、光蓮様の隣に座っている綺麗な女の人は更に続けた。



「そのように簡単なことではないのです。東雲家の妃になると言うことは……紅蓮、お前の妃になると言うことは、並大抵のことではないのです。自分自身が1番分かっていることでありましょう」



声を荒らげているわけでもないのに、部屋の空気を一瞬で凍らせてしまえるほど冷ややかな声を発して彼女は紅蓮を見つめている。



「……母上」


「東雲家、2代目の妻として紅蓮の妃はしっかりとこの東雲 双葉が見極めさせて頂きます」



この人が紅蓮のお母さん。


艶やかな真っ赤な着物に身を包み、黙っていればおしとやかそうなその麗しい顔には似合わない冷たい声で紅蓮を一蹴する。


東雲家2代目当主……東雲光蓮の妻。


なんだろう……威厳が違う。
楓さんもすごい気品があって、芯の強さを感じて、かっこいいって印象を与えられるには十分な人だったけれど、


なんだろう……。


この、双葉さんから感じる……強さ。双葉さんを取り巻く空気が凛と澄んでいる感じ。




この空間にいる全員が、二人のやり取りを冷や冷やしながら見守っているのが分かって、


紅蓮の隣にいる自分を不思議に思う。