……まだ、諦めてなかったの?
ていうか、ヒメって、何?


やけに真面目な顔で光蓮様を見つめる紅蓮の横顔に、ドクドクと心臓が壊れそう。


「早く妃を迎え、3代目としてのお披露目式をするようにと、父上も常日頃仰っておられることです。……悪い話ではないかと」


部屋で話した時の紅蓮を思い出して、今目の前で冷静に話をする紅蓮に違和感を抱いてしまう。


堅苦しい話し方のせいなのか、


それとも、何を考えているのかサッパリ分からないその瞳の冷たさなのか。


「東雲家にとって、1番信頼のおける東里家に娘ができた今、蘭を妃として傍に置くのが私にとって最善だと判断いたしました」



紅蓮って、どんな人なんだろう。
冷たい瞳とは裏腹に強引だったり、くだけた話し方の時は少しだけ近い存在な気さえしてしまう。

この男は、本当はどんな人なんだろう。


……出会って間もないけれど、私の知っている紅蓮という男は、どこまで本当で、どこまで偽物なんだろう。


そんなことをふと考えてしまう。





それくらい、掴めなくて。
それくらい、気になってしまう。


そんな人。



「しかし……」


「それはなりません」



光蓮様が静かに口を開いた次の瞬間、部屋の中に冷たい声が響いた。