「私も遠くから応援してるよ」

そう言って彼女は、一旦言葉を切った。

「桂碁」

静かに彼女は言った。

「こっち向いてくれる?」


すると、二人の周りの空気がサッと動くとともに、目の前が急に暗くなった。

声も出すことができなかった。



キスされたのだと理解するまで、数秒を要した。

「なんで…?」

唇が開放されてすぐに聞いた。

「私からの、ヒミツのプレゼント」

彼女は笑って答えた。

「もう一つの理由は、自分のけじめとして。じゃあそろそろ帰ろうか」

堀野は立ち上がって、桂碁に手を差し伸べた。

「うん」

桂碁はその手をしっかりと取った。


今日は、多分今までで一番永い一日だった。

そう思いながら―。