「黎っ」


「すみません。俺にとってはどうあっても弟です。一人には出来ない」


「―――」
 

黎の言葉を聞いて、三人は押し黙った。


「私には大事な友達です。行かせてください」
 

真紅が願い出ると、ややおいて誠が「頼みます」と応じた。
 

黎と二人で外に出ると、家人らしき人に出くわした。


黎が「架を見なかったか?」と問うと、中庭の方へ歩いて行ったと返答があった。


真紅も礼を言って、先を急いだ。
 

中庭の大きな樹の下で、幹に向かっている架がいた。


「架!」