Side 心音



夜ご飯を食べて、夏也と桐崎くんが帰ってからお店の片づけをお父さんと一緒にしていた。



「検査結果、なんて言われたの。」



私は、産まれてから心臓に病気があってもう長くないと言われている。



元々、10年は生きられないと言われていたからいつでも覚悟はできている。




後悔が残るとしたらお父さんを1人ぼっちにしてしまうこと。



だから、お店を通していろんなお客さんとの関りを私は父以上に大切にしている。




「うん…。」




お父さんは。難しい顔をしながら味の仕込みをしていた。





「もう聞きなれてるから、大丈夫よ。



あんまりよくなかったんでしょ。」




私の問いに対し、父は一筋涙を流しゆっくりうなずいた。




「そっか…。よし。今月もちゃんと生きないとね。」




「今月も、一緒に思い出作ろうな。」




お父さんは私にそう言い、私も笑顔で答えた。




「当たり前だよ。」




お店の片づけを終え、私とお父さんは一緒に家へ帰った。





自分の部屋に入ってから、私は今日の出来事をイラストにして日記に残した。




元々、絵を描く事が好きで日々の記録をこうして残している。




中学生の時、ふと私がいなくなったらお父さんはどうなってしまうのか。





そう考えたら、私がもしこの世を去る時に私の生きていた証を残したかった。




私がいなくなってもお父さんが悲しまないように。




自分にできることは、自分の生きた記録を残すことだと思った。




これは、どんなに忙しくても毎日欠かさずに行っている。




でも、お父さんはまだこのノートを見たことはない。



これを書いていることさえ知らない。




だから楽しい。




これを見て、お父さんはどんな顔をするのかとか考えるのも楽しい。





色鉛筆で、描いたイラストを彩ってから私はベッドへと横になった。