「それにね。いくら高校生だからって居酒屋に2人で来るのはよくないでしょう!


夏也も、桐崎君を巻き込んでるんじゃないよ。」




すごい剣幕で、夏也を見る心音。




本当に面倒くさい。




それでも、夏也はサラッと心音の言うことをサラッと流すように、オレンジジュースを味わいながらゆっくり飲んでいた。




「それより心音。今日は親父さんいないのか?」





「まあね。私の検査の結果聞きに行ってるの。」





「そっか。



まあ、そんなに元気なら問題なさそうだよな。



お前から元気をとったら何も無くなっちゃいそうだよな。」




笑いながら、心音をからかう夏也はいつも学校で見ている夏也とはなんだか違うように感じた。





俺以外にも、こんな笑顔を見せるんだな。




それにしても、幼なじみにこんな奴がいたなんて全く知らなかった。




しかも、夏也とは正反対の奴だもんな。





「夏也だってそうでしょ。夏也から元気をとったら何が残るのって。」




「はいはい。それより、心音。お前もご飯一緒に食べようよ。



客もそこそこ少なくなってきたわけだし。親父さんだってもうそろそろ帰ってくるだろう。」




心音は、壁にかかっている時計を見て焦ったようにエプロンを外した。




「早くご飯食べなきゃ。楽しみにしてるテレビ始まっちゃうじゃない。」





意外だな。優等生もテレビを見るのか。てっきり、勉強でもするのかと思って急いでエプロンを外したのかと思った。



心音は、そう言ってお店のテレビを自分の見たい番組へ回した。




「まったく。客からテレビとるとか、どんな店員だよって。」



呆れたようにお店に入ってきた心音の親父さんが、心音の姿を見てやれやれというような表情をしていた。




「お父さん。お帰り。」



「ただいま。お店はいいからちゃんと座ってテレビ見なさい。



夏也君と…。お友達かな。こんばんは。」




「こんばんは。」



俺は、心音の親父さんに軽く頭を下げた。



「心音、ご飯はこれからか?」



「うん。だけど今日はいいや。」



「食欲ないのか?」



「そうじゃないけど、もう遅いし今食べたら明日気持ち悪くなりそうだから。



それで休んだら、私の皆勤なくなっちゃうじゃない。」




さすが、優等生だな。



「それなら、栄養スープだけ飲んで。何もお腹にいれない方が体に悪いだろ。」




「はーい。」



心音は軽い返事をして、野菜たっぷりとご飯が少し入ったスープを少しずつ食べ始めていた。