「おい!もうちょい速く走れねーの!」

「ムリ〜!綾瀬くんが速すぎるのー!」

すごい速さで走っていくセイくん。

少しくらいペース落としてくれてもいいのに〜。

しばらく路地裏の細道を走り進むと、突然セイくんがピタッと足を止めた。


え.....?!

行き止まりなんだけど......?


あたしが目の前の壁を見つめながら、呆然としてると

「何つったってんだよ!早く登れよ!」

セイくんが急かすように、背中を押してきた。

「え.....? 何言ってるの?登れって.....。
ひょっとして、この壁のこと?!」

「は?他に何があんだよ。」

呆れ顔で大きなため息をついたセイくん。

「こ、こんなとこ登れないっっ!!」

あたしは泣きそうな気持ちをグッと抑えながら、セイくんに反発した。

「ったく....。登る前からあきらめんなよ!」

そう言ってセイくんは器用に壁をよじ登っててっぺんを跨ぐと、身を乗り出し手を下に伸ばした。

「リセ!早く!手!」


えぇ?!

セイくんの手掴めってこと?!